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n°631 : 2008/5/1
被写体の力と監督のセンス。"Shine a light", "Berlin"
 マーティン・スコセッシが撮ったローリング・ストーンズのステージ『Shine a Light』。ジュリアン・シュナーベルが撮ったルー・リードのコンサート『Berlin』。被写体のもつ力と監督のセンス、両者の共謀関係がドキュメンタリー映画の真髄。スコセッシは、なんといってもストーンズのファン、自作の中でも彼らの音楽をたくさん使ってきた。「僕のアイドルを撮るのだ!」という張り切り方が画面にみなぎる。シュナーベルの方は、ルー・リードというアーティスト、ミュージシャンにして詩人が生み出す世界に寄り添う。
 ステージを駆け回るミックのスリムなボディー、炸裂するセクシー・パワー。はにかみ屋キースのへなへなっとした姿態から飛び出す音階。黙ってドラムを叩きつづけるチャーリー・ワッツ。ひたすら演奏に没頭するロニー・ウッド。平均年齢63歳、キャリア45年、髪を切ってスーツを着ることを拒んだ永遠の不良少年たちの不屈の精神に感動する。人生、満足しちゃいけないのだ。ずっと、「I can get no satisfaction ! 」と叫びつづけるのだ。
 64歳のルー・リードにも惚れ惚れ。深くて渋い。それがなにげに表出しているところがよい。シュナーベルは、この1973年に出たアルバム『Berlin』を主題にした、2006年のコンサートの舞台背景セットも担当し、そこに挿入される、主題歌のヒロイン、キャロラインのイメージ映像(エマニュエル・セニエが演じ、監督の娘、ローラが撮影)も手がけている。つまり外側からの視点で被写体を捉えるだけでなく、コンサートの演出に関与もしていることになる。彼の提供したものが、リードの歌唱により昇華する観客の感性をさらに刺激しサポートする。今回は音楽×映画体験レポートでした。(吉)

Jean Dujardin (1972〜)
 テレビ会社による映画製作への出資が義務づけられた80年代以降、政略結婚をさせられたテレビ界と映画界はにわかに急接近。映画界にはテレビ畑出身のコミックスターが流れ込んでいった。ジャン・デュジャルダンもその一人。大人しくしてればモデル並のルックスだが、笑うと思いっきり下がる眉毛がご愛嬌だ。
 彼の出世作『Brice de Nice』では地中海で大波を待つ金髪のサーファーくずれ、『OSS117, Le Caire nid d'espions』ではフランス版のおとぼけジェームス・ボンドに扮し、鮮烈なキャラクターを構築することに成功した。映画は大ヒットを記録し、今やフランスで最も稼ぐ俳優に昇進した。彼のやや「成り上がり」的なイメージは、『99francs』や、現在公開されている『Cash』など、お金に関するテーマの映画を、自然に呼び寄せているところがあるかもしれない。器用なので『ブルーレクイエム』や『Contre-enquête』など、シリアスな演技もお手のもの。だがやはり彼の基本はコメディだ。「俳優と認められるためには、深刻な役を演じないといけない。でもシリアスな役はコメディよりもずっと簡単さ」。こう語る彼の笑いの源は「人間観察」にあるという。「兵役時代、回りの人を観察することほど、笑ってしまうことはなかったんだよ」。(瑞)

●Hommage à Humbert Balsan
 繊細な美貌で、20歳の時にロベール・ブレッソン監督の『湖のランスロ』で役者デビュー。だがアンベール・バルザンはプロデューサー業を選びとったのだ。アラブ系監督と強い信頼関係を保ち、ヨーセフ・シャヒーンやエリア・スレイマン作品を製作。またサンドリーヌ・ヴェッセやヨランド・モローなど新しい才能にも手を差し伸べた。
 日曜日も休みなく仕事をしていた彼は、3年前の冬、50歳の若さで首つり自殺。周りからは優雅にみえたが負債も抱えていた。映画に殉死した彼の存在は、プロデューサーという仕事の意味を私たちに突きつける。パリシネマテークでは5月5日から27日まで、孤高の映画人の仕事を回顧上映で振り返る。(瑞)

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