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パリの子育て・親育てー 44
美術館でスケッチをしたい。
 フランスの美術館に行くと、よく作品の前で子供や美術系の学生がしゃがんでスケッチをしている光景に出くわす。「他人に絵を見られたら恥ずかしい」などという、つまらない自意識とは無縁のようで、みんな伸び伸びと手を動かしている。さすがは路上で音つきブチューをするカップルや、バゲットをちぎりちぎり食べ歩きする人が多い国だ。要するに人目はあまり気にしない人が多いのだろう。公然ブチューは遠慮したいが、美術館でのスケッチ体験はぜひしたいと思っていた私は、ミラと友人を誘い、ポンピドゥ・センターのジャコメッティ展に足を運ぶ。
 会場はけっこう混んでいたので憧れの地べた座りは叶わず、ベンチに座って描くことに。一緒に来た友人は、さあ描くぞという段になり、大和撫子の自意識が顔を出したのか、「やっぱり恥ずかしい」と単なる鑑賞モードに入ってしまった。しょうがないので最後の味方ミラと、クレヨン片手に模写を始める。しばらくしてミラが「おわった!」と言うので、彼女のスケッチブッグをのぞく。だがどこにもジャコメッティ作品はない。そしてなぜか、ウサギばかりがいる。そうか、ミラはクレヨンの箱に印刷されているウサギの絵をスケッチしていたのだ。美術館まで来た意味は一体…。それでも親切な警備員のオジさんに「上手だね」と褒められ、大層ご満足そうなミラ画伯であった。(瑞)

●Les Aventures du Prince Ahmed
 フリッツ・ラングが『メトロポリス』を発表した1年前の1926年に、同じベルリンでドイツ人女流作家ロッテ・ライニンガーが作った初めての長編アニメがこの『アクメッド王子の冒険』である。『アラビアン・ナイト』をベースにしたストーリーで、はじめは美しい妹を、次いで一目惚れした妖精バリバヌーを悪い魔法使いに奪われたアクメッド王子が、魔法使いから二人を救い出すまでに遭遇する冒険の数々が描かれていく。切り絵といえば、すぐに『モチモチの木』などの名作絵本を生み出している滝平二郎さんの名を私は浮かべてしまうのだけれど、ライニンガーの切り絵、影絵は、滝平作品の太い線に加え、妖精や王子の衣服のレースや羽にいたるまでの繊細な線をみごとに表現し、しかもアニメーションだからこれらの絵が流れるように陰影をつけながら動いていき、それはそれは美しい! 無声映画のため映像のところどころに状況を説明するインタータイトルが挿入される。やはりこれがきちんと読める小学生以上向けの作品なのだろうな、と思う(美しい動画には小さい子も見惚れるとは思うけれど、ストーリーが理解できるかどうか?)。
 同じく最近修復されリバイバル公開されているチャップリンの『サーカス Le Cirque』も、サーカスという子供が好きなテーマに加え、なによりあのチャップリンのドジだけれど憎めないキャラクター、悲恋話がギャグたっぷり、そしてリズミカルに描かれていて楽しい。
 娘は、アクメッド王子よりも妖精に、チャップリンよりもチャップリンの恋の相手であるサーカス団長の娘に、可愛いと惚れ惚れ。そしてなにより両作品のインタータイトルが自分で読めたことが自慢だった。(海)



*Les Aventures du Prince AhmedはDenfert(14区)などで上映中。

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