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特集:臓物料理をもりもり食べて寒さを乗り切ろう。
—フランス臓物連盟会長ジェラール・カトランさん—
臓物のイメージチェンジが大切。
 ランジス中央市場の臓物コーナーで働く12の卸商113人を率いるジェラールさんは、臓物業界のドン。「臓物とは、骨に直接触れない部位のことです」と説明する。まだまだ「ゲテモノの類」という印象が強く、「長年、臓物は精肉業界の最も低い位置に立たされてきたんです。残り物を扱う業者だと言われてきました」。1996年にピークに達した狂牛病騒ぎの時は、1週間で60%も売り上げが減少、業界は大恐慌におちいった。
 「からだの名前をそのまま呼称すると、死んだ動物を思い出させるから、最近はもっとソフトな言葉を使うようにしてイメージ改革をしていきたいんです。睾丸のことを白い腎臓と呼ぶようにね」。そんな効果もあって「一昔前まで、消費者は中年以上と話が決まっていたけど、最近は好奇心旺盛な若者たちにも受けているんですよ。トリップや豚の乳房肉の人気がでてきて嬉しいかぎりです」
—老舗臓物店のディディエ&アニック夫妻—
この店も私たちの世代で終わり。
 パッシー街の商店街に48年前から、親子三代にわたって臓物屋を営むディディエさんと妻のアニックさん。パリで10軒にも満たない臓物屋の一つで、16区ではここだけ。
 「最近の売れ筋は子牛。お客さんの90%がシニア世代だから、料理に手間のかからない、柔らかく噛みやすい素材でなくちゃならないんだ」とディディエさん。ランジスから買い付けた塊肉を扱うディデイエさん、注文が入ってから店頭の臓物をさばいていくアニックさん、と二人の役割分担がはっきりしている。人差し指の延長のようにゆうゆうと包丁を操る姿に、つい見とれてしまう。「10年前に臓物屋のディプロムCAPがなくなって以来、なり手が激減し、ここも私たちの世代で終わるでしょうね」と寂しそうな表情のアニックさん。毎朝4時起き、週休一日、70時間労働のスケジュールをこなすお二人である。
Triperie Mussard : 35 rue de l'Annonciation 16e
—臓物ファンのステファンさん—
臓物屋さんの腕にかかっている。
 「本当においしい臓物を知ったのは、狂牛病騒ぎが収まってからだ。給食で食べた、ゴムまりみたいな腎臓やタンシチューのあまりの不味さに、臓物に対するトラウマがあったんだ」。ところが狂牛病騒ぎの間、周囲から「脊髄のないポトフなんて!」、「リ・ド・ヴォーを食べる夢をみた!」との声が聞こえて、その切実さは一体どんなものかと興味がつのった。
 狂牛病に終止符が打たれた2002年から臓物世界の奥深さにはまり、今では子牛の頭肉や豚足のもちっとしたゼラチン質、子羊の脳みそやリ・ド・ヴォーの複雑な味わいのとりこに。「ただ友人を自宅に招くときは気をつけることにしているよ。フランス人は保守的だから、いくらメディアが臓物がおいしい、とあおっても簡単にはうまくいかないよ。だからこそ、子牛の頭のようにグロテスクな食材が食卓に並ぶには、いかに見栄えよく処理するか臓物屋さんの腕にかかっているんだ」

Le Pharamond 1832年創業の店でカーン風トリップ料理を満喫した!
 1832年創業、深紫のビロードのカーテン、壁に飾られた金縁の鏡、上階のプライベートサロンと、重厚な雰囲気がぷんぷん漂う。
 ここでは前菜をとばして、メインの名物カーン風トリップの煮込み(21€)を注文する。友人は南西部コレーズ県のBrive La Gallarde産アンドゥイエット(29€)。ふと周りを見渡すと、恰幅のいい紳士や不倫風のカップルなど、店内は独特の熱気に包まれている。さて、肝心のトリップは、ゆうに三人前はあるココット鍋に、ミノ、ハチノス、センマイといった牛の胃袋を9時間かけて煮込んだもの。ふわっとカルバドスの香りが立ち上り、琥珀色のスープから、とろっとしたような、ぐにゃとしたような胃袋が顔をだす。うまい! アンドゥイエットの気前の良さだって半端じゃない。400グラムで25センチの大きさ! 香ばしく炭火焼きされ、脂身が少なくプリプリとした歯ごたえ。カリカリ・ホクホク・ハフハフと三拍子揃ったフライドポテトとの相性も抜群だ。この時点でお腹ははちきれそうだったが、デザートのクレープ・シュゼットを欲張る。たっぷりのバターにカラメルとグランマルニエを絡めてフランベされた濃厚な甘さが体中に広がる。
 ここは昨今のヘルシー志向を笑い飛ばし、カロリーなんて微塵も気にしない食道楽の集まる店だと実感。昔風の美食流儀を貫くこの店には、きっちりお腹をすかせて出かけたい。





24 rue de la Grande truanderie 1er
01.4028.4518


●Michèle Villemur "Plats Canailles :
Ris, rognons, tripes et Cie"
 クーポール、リップ、ピエ・ド・コションなど、パリのブラッスリーやビストロのシェフ42人が、それぞれお得意の臓物料理を披露する。子牛、子羊、牛、豚と4章にわたって、わかりやすく説明されている。脳みそのムニエル、オングレのエシャロットコンフィ、リ・ド・ヴォーのリゾット、豚足のカルパッチョなど、全74品。美味しそうな写真が満載で、読んでいるだけで思わず生つばがこみあげてきそう。臓物料理のレパートリーが一挙に広がりそうな一冊。
Aubanei発行。35€。

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