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—大学内の医療博物館—
あの人も世話になった外科手術器具の数々。
 パリの学生街の元祖、カルチエ・ラタンにあるパリ第五大学(ルネ・デカルト)。医者の卵を輩出してきた本校舎内には、医療の歴史を追ったミニ博物館がある。興味をひかれ校舎入り口まで足を運ぶも、わかりやすい表示が見つからない。「学校ですから人が押し寄せても困るので」とは受付の人の声。エレベーターを使い、ようやく3階にあるさりげない博物館の入り口に到着。
 ドアを開けると、奥行きのあるシンメトリックな空間が広がり、外科関連の器具や主に18世紀に描かれた医学分野の偉人の肖像画などが目に入る。展示室はこの一部屋のみ。もとは図書館であったというこの場所に展示物が移されたのは1954年だ。「ヨーロッパ最古のコレクション」と謳っているだけあり、展示は古代文明の時代から幕を開ける。古代エジプト時代には、すでに眼科医などの専門医も存在したのだから、医療の歴史も古いもの。時代は進み、生々しい医療器具の数々が登場。サイボーグも真っ青の義手、どこを切るのか知りたくない大型のこぎり、極めつけが尿管を通り体内の石を破壊する細長い器具。器具の隣には、手術中の様子がイラストで描かれているものも多いが、阿鼻叫喚の表情を浮かべていたであろう患者の顔までは描かれていないのは、博物館側の配慮か。またガリア人の陶器製哺乳瓶や19世紀末の搾乳器の展示は、いつの時代でも子供を思って母は苦労してきたんだと興味をそそられた。当初は医学を目指す者のための教育目的で収集され始めたそうだが、展示品を眺めるにつれ、関係者に独占させるにはもったいない面白コレクションであることがわかる。
 そしてお待ちかねは展示係員イチ押しの有名人シリーズ。「アントマルキ博士の携帯用の用具入れ」は、ハサミやピンセットなどが入った地味なケースだが、これはセントヘレナ島で息絶えたナポレオン一世の検死に使用されたもの。また、先端がC型に反った「シャルル=フランソワ・フェリックスのメス」は、何を隠そう1686年11月18日に外科医のフェリックスが、ルイ14世の痔ろうを治療したメスなのだ。この手術の成功で、同医師は報酬に15万リーブルとムリノーの土地まで与えられたとか。お尻スッキリで太陽王もさぞ満足したのだろう。(瑞)

アントマルキ博士の携帯用の用具入れ。





Musée d'Histoire de la médecine / Université René Descartes : 12 rue de l'Ecole de Médecine 6e
木・日・祝日閉館(夏期は木のかわりに土)。
14h〜17h30。
3.5€。01.4046.1693

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