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自然への崇敬が伝わってくる。
"Ferdinand Hodler"
 今月の展覧会には面白いものが多いが、粒が皆同じくらいで、「絶対にこれがおすすめ!」という飛びぬけて強力なものがない。そこで、展示会場の一室が輝きを放っていて印象深かった、スイス人画家フェルディナント・ホドラー(1853-1918)展を取り上げることにした。
 ベルンの貧しい家庭に生まれたホドラーは、1871年にジュネーブに移住し、美術界にデビューした。若いころは「写実的すぎる」として受け入れられず、不遇だった。1891年、ジュネーブで展示を拒否された『La Nuit 夜』をパリで発表したら、ロダンやピュヴィス・ド・シャヴァンヌから注目され、「災い転じて福となす」に。その後、ドイツやスイスから注文が来始め、生活は楽になった。1904年、ウィーンの「分離派」展では招待作家という名誉を受け、以降、名声はヨーロッパ中に広まった。画家としての後半生は幸運なものだった。
 今回の展覧会では、主要な油彩約80点と、フランスでは未公開の素描や写真が見られる。 
 会場前半の象徴的な人物画の中では『La Nuit 夜』に、性と死が絡み合った力強い暗さと、夢の重層性が感じられる。けれども、象徴的といわれるホドラーの作品は、全体的にみると知的に意味づけしたわかりやすさが目立ち、見る側にとっては想像の広がる余地がない。
 ホドラーは、20世紀初頭、セザンヌと並んでヨーロッパ一の風景画家といわれていた。その真髄は、会場の真ん中あたりの第8室で見られる。ホドラー展に来るのはこの部屋の作品を見るため、と言ってもいいほどだ。薄紫の霞がかかった麓の彼方にアイガーやユングフラウの峰がそびえる風景、レマン湖上空に漂う雲が天使の顔のように見える作品、夜のトゥーン湖からこの世のものではないような霊気が立ち昇る作品…画家の自然への崇敬が伝わってくる。逆に、隣の7室の風景は妙に写実的だ。粘土質の岩が頭にねっとりこびりつくかのようで、見ていても気持ちが晴れない。
 会場の終わりに展示されている肖像画もいい。茶目っ気のある自画像から、飾り気のない人柄がうかがえる。(羽)



オルセー美術館
9h30-18h 木〜21h45。月休。2月3日迄。

G A L E R I E: Downtown
 20世紀の建築家がデザインした家具を専門に扱うギャラリーだ。
 オーナーのフランソワ・ラファヌール氏は、30年前、バイクの事故にあった時に手に入った賠償金を元に、大学生活を辞め、クリニャンクールの蚤の市に場所を買い、家具を売り始めた。ある時ジャン・プルヴェの椅子が出た。プルヴェの家具は大学都市にあるとわかって、大学都市の建物の改装の時に家具を買い取った。その時から建築家作の家具とのつきあいが始まった。プルヴェとシャルロット・ペリアンがメインの作家だ。
 フランスにとどまらず、日系アメリカ人のジョージ・ナカシマや在英イスラエル人のロン・アラッドなど、世界中の建築家の家具を扱う。
 「知的で、美と実用を兼ね備えるという哲学がある作家、ペリヨンとプルヴェに近い人たち」で、好みに合う作家を選んでいる。
 新設の別館では、本館の家具と雰囲気の違うものを展示する。12月末までは、在英ドイツ人作家トム・フェヒトの写真展だ。現実と非現実の狭間を漂う完璧な写真で、今月のおすすめの一つ。(羽)
33 rue de Seine 6e
別館:22 rue Visconti 6e
galeriedowntown.com
カルチエ財団で、個性のまったく異なる米韓2人の作家の個展を同時開催。
●Robert Adams "On the Edge"
 1937年生まれのアメリカ人写真家の、フランス初の個展。無謀に伐採されたアメリカ西部の森林跡の風景と太平洋の写真の連作。一見誰でも撮れるような写真だが、まとめて見ると確固としたスタイルに貫かれているのがわかる。150点。過去の写真集40点も展示され、作家の全貌がつかめる。
●Lee Bul "On Every New Shadow"

 ブルーノ・タウトの作品からインスピレーションを得た韓国人美術家、イ・ブル(1964-)のインスタレーション12点。クリスタル、金属、グラスファイバーを使った作品が、床面に反射して夢幻的な美しさを醸し出す。
両展覧会とも1月27日迄(月休)。
Fondation Cartier : 26 bd Raspail 14e

●Alfred Kubin (1877-1959)

 ボッシュやゴヤの流れを汲み、夢と妄想が錯綜する作風で知られたオーストリアの素描家兼作家。グロテスクな生き物たちが空想の世界でうごめく。カンディンスキーとともに、前衛芸術グループ〈青騎士〉の創立者の一人でもある。150点。1月13日迄(月休)。
パリ市近代美術館 :
11 av. Président Wilson 16e

●Alexeï Vassiliev

 フランスに移住した1993年から、独学で写真を追求し始めた在仏ロシア人作家の写真展。背景に溶けたぼかした人物像から、魂の動きが見えるかのよう。12月16日迄。 
Maison des arts Châtillon
http://maisondesarts.ville-chatillon.fr
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