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「芸術家」としてアッジェは一体どこにいるのか…
"Atget, une retrospective"
 生誕150周年、没後80周年を記念した、ウジェーヌ・アッジェ(1857-1927)の回顧展である。
 晩年、マン・レイに「発見」されなければ、職人的な記録写真家として、その作品は国立図書館に眠ったままだったかもしれない。アッジェの栄光は、モンパルナスの同じ通りに、1922年、マン・レイが引越してきた時に始まった。アッジェの写真を買い取ったマン・レイは、ブルトンが主催するシュールレアリズムの雑誌に、その作品を載せた。マン・レイの助手で、のちに著名な写真家となったベレニス・アボットもアッジェと親交を結んだ。アッジェの死後、作品1万点を買い取ってアメリカに持ち込み、40年間アッジェの紹介に尽力した。アボットの所蔵品は、現在、ニューヨーク近代美術館(MOMA)にある。海外での評価が逆輸入され、80年代以降、フランスでも、写真のパイオニアとしてアッジェの評価が高まった。
 アッジェが記録した「古いパリ」は、今ではほとんど存在していない。面影が残っているのは、セーヌのほとりとパサージュだけ。通りの名前を見て、現在の様子と比較するのも楽しい。しかし、どうも絵葉書的だ。古書市に出る、フランス各地の昔の絵葉書を見ているようなのだ。焼き栗売りや浮浪者の姿も、パリの一時代の風景として捉えられている。建物の扉や階段の手すりの装飾の写真からも、職人アッジェの姿しか浮かんでこない。「芸術家」アッジェは、一体どこにいるのか。
 それは、奥の展示室に少しだけあった。旅をしている人のように見える、公園の中にぽつんと立っている彫像。道の真向かい側の建物がショーウインドーに投影されることで、不思議な空間を作り出している作品。リー・フリードランダー(オヴニー596号)の作風によく似ている。それもそのはず、フリードランダーは、アッジェから大きな影響を受けたのだった。
 映画「去年マリエンバードで」を想起させる「サンクルー」では、恐ろしいほどの静けさが、この世のものならぬ美しさを生み出している。   
 回顧展と銘打つなら、国立図書館所蔵品にこだわらず、高く評価されたMOMAの所蔵品をもっと見せてほしかったと思う。(羽)


Bibliotheque Nationale, site Richelieu :
58 rue de Richelieu 2e  7月1日迄。月休。

G A L E R I E
Galerie Serpentine
 モンパルナス駅近くの地下駐車場の通路が、画廊になった。車を置いた人たちが上がってくる、地上への通路の壁に作品が展示されている。
 駐車場の所有者で、美術愛好家のミシェル・フォルタン氏がこの場所を画廊にすることを思いついた。
 「画廊に入ったことがない人や、美術が日常生活の中にない人にも、若い美術作家の作品を知ってもらいたい」というのが最初の狙いだった。 
 2005年10月の開廊以来、毎日500人から3000人が訪れている。利用者の多くは、向かいの大型書店「フナック」に買物に来る人たちだ。
 「コレクターもいれば、ここで初めて美術品を買ったという人もいます」と、広報担当のシルヴィー・アウゼルさんは客層の広さを強調する。年末は手頃な値段の小品が出る。
 展覧会は約2カ月続く。7月13日までは、マリ共和国の現代作家7人展を開催している。マリオネット、リサイクル紙の作品、木の彫刻とさまざまだ。ニューヨークやセビリヤで紹介された、著名作家アブドゥラエ・コナテのテキスタイル作品『L'Intolerence』 も展示されている。(羽)



155 bis rue de Rennes 6e
www.galerieserpentine.com
●Esclaves au paradis
 貧しさから逃れるために、隣のドミニカ共和国に移民したハイチ人たちを待っていたのは、サトウキビ畑での奴隷労働だった。1日15時間働き、衛生も栄養も住居も劣悪な状態で医療も受けられない。50万人と推定される彼らを、セリーヌ・アナヤ・ゴチエが現場に潜入して撮った。6/15迄(日休)。
L'Usine Spring Court : passage Piver 11e

●La passion Leonard, comprendre & creer
 ダ・ヴィンチの活動を総括。『モナリザ』、『最後の晩餐』を拡大、分析することで、今までと違った見方ができる。6/24迄(無休)。
Refectoire des Cordeliers:
15 rue de l'Ecole de Medecine 5e

●Rodin, le reve japonais
 ジャポニズムの流行が終わろうとしていたころ、ロダンと日本の結びつきが始まった。白樺派の作家たちがロダンに贈った浮世絵や、旅芸人一座の女優、花子をモデルに制作した頭像と素描を展示。日本で素描展を開くことを夢見ていたという、ロダンの知られざる一面に触れられる。9/9迄(月休)。
ロダン美術館 : 79 rue de Varenne 7e
●Abraham Pincas

 パリ国立美術学校の技法の教授ピンカスが、独自の技法で制作したコートとパネル。トルコの伝統的なフェルトに絹を張り、真珠のような表面に墨で描く。光によって浮かび出る部分と消える部分と。6/17迄(月休)。
Musee Galliera :
10 av. Pierre 1er de Serbie 16e

●John Chamberlain
 アメリカ人彫刻家の最新作。圧縮した金属に鮮烈な色が飛び散る。さなぎから孵化(ふか)する寸前の蝶のような軽やかさと、変身の妙があり、素材への思い込みを見事に裏切ってくれる。6/30迄。
Galerie Karsten Greve : 5 rue Debelleyme 3e
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