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—パリで一番古いパン屋さん—
ナポレオンもこの店のパンを食べたかも?
 フランス人の生活に切っても切れないのがパン。今日は庶民の味の誕生に立ち会うために、オペラの日本人街からも近いパン屋〈グラン・リシュリュー〉へ。外観はいたって普通の町のパン屋さん。だがここは現存するパン屋としてはパリで最古の店なのだ。
 「開店は1810年。ナポレオンもこの店のパンを食べたかもしれないよ」と笑うのは店のご主人クロードさん。以前はノルマンディー地方で農業に従事していたが、38年前に一念発起してパン職人となった転向組。
 まずは店の定番商品パリジャン(ひと回り大きなバゲット)を作っているところを見学。材料はシンプル。小麦粉、イースト菌、水、塩だけ。大きな釜のような自動練り機の上方には、小麦粉専用の太いパイプがさがる。定期的に店の前にトラックが来て、このパイプを通し小麦粉が送られる。保存中に虫などに食べられないよう、小麦粉は常に新しいものを使うようにしているのだ。
 それから、クロードさんはすでに天板に並べられたパリジャン生地の表面に、カミソリの歯を使い、流れるように切れ目をつけていく。これはパンが中までよく焼けるためにするそう。私もやってみたが、パン生地の柔らかさがまるで動物の体でも切っているように思われちょっと変な感じがする。全部に切れ目がつけられたらオーブンへ。年を重ねてもまだまだ腕っぷしの強そうなクロードさん。無数にパンが乗っている重そうな天板を次々とオーブンに入れていく。目盛りは240度。
 パンが焼ける間、地下にある工房でクロワッサンなど他のパンの作り方を見せてもらいながら話を聞く。「辛いこと? 夜中から翌日の昼過ぎまで働くからいつも寝不足なこと。35時間労働とは無縁だね」。そう言いながらも、ごつごつした彼の手は、寝不足とはなんのそのといった調子で、一寸の狂いもなく小さなクロワッサン生地を、器用にくるくると巻いていく。
 いよいよパリジャンが焼けた。オーブンを開けると、黄金色のパンからパチパチパチと弾けるような音が聞こえてきた。「パンが歌っているよ」とクロードさんがいとおしそうにつぶやく。そしてお待ちかねの味見タイム。出来たてホヤホヤの素朴な味わいに、ほっぺが落ちそうになった。(瑞)









Grand Richelieu : 51 rue de Richelieu 1er
見学会を定期的に開催。参加費5euros。
詳細はwww.meeting
thefrench.com

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