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ドキュメンタリー映画は豊か。
想田和弘監督『選挙』他
 事実は小説よりも奇なりというが、最近、世界的にドキュメンタリー映画の人気が高い。下手なフィクション映画より余程面白く、多くのことを我々に問いかけてくれるからだろう。先日ポンピドゥー・センターで開かれていたドキュメンタリー映画祭〈Cinema du Reel〉で上映された『選挙』は、ニューヨーク在住の想田和弘監督が、友人が川崎市議会の補欠選挙に立候補することを知って、彼のキャンペーンに密着して撮り上げた作品。これは本当に記録映画か? やらせはないのか? という質問が飛ぶほど場内爆笑。監督はただひたすら、友人が「お願いします」と道行く人に握手して回り、名前を連呼している姿と、彼を候補に担ぎ出した自民党の応援態勢を追ってるだけだ。日本では見慣れた光景がちょっと距離をおいて見ると、こんなに可笑しいのだ。候補はついに一度も公約など口にせず当選してしまう! 日本という国はこうして成り立っているのだとあ然としてしまう。ほんの些細な観察でなんか凄いことを知ったような感じがして、図に乗って(?)劇場公開中のドキュメンタリーを2本観た。ドイツの Nikolaus Geyrhalter 監督『Notre pain quotidien 日々の糧』にもあ然! すっかり工業化された農業の現在をこれまたひたすら撮っている(台詞なしだから語学が苦手な方でも映像だけで100%理解できます)。我々の胃袋を日々満たしてくれる食料がいかに生産されているのかを知って、何をか言わんやである。フランスのエレーヌ・ド・クレシー監督『La Consultation 診察』は、ある開業医と彼の所に診察に訪れる様々な患者を撮るうちに、「医学より医者が必要」な現代の社会病ともいえる症候群が見えてくる。ことほど左様にドキュメンタリー映画は豊かなのである。(吉)

Guillaume Canet (1973-)
 ついにセザール最優秀監督賞を手中に収めたギョーム・カネ。「俳優の余興」としてはくくれない彼の監督第2作『Ne le dit à personne』は本年度を代表する一本に。俳優としても監督としても、次世代を背負う希望の星として映画界からの期待は絶大だ。
とはいえ銀幕デビューは運命との出会いの賜物だ。彼は、馬のブリーダーである父の影響で長らく乗馬に情熱を傾けていたが、落馬アクシデントでジョッキーになる夢が断たれていた。そんな折、名優ジャン・ロシュフォールが父の牧場に偶然訪ねて来た。そしてギョームに「映画俳優に向いた顔」と映画出演をすすめた。当時、演劇に興味が募りテレビの端役デビューも果たしていた彼にとっては渡りに船。それが初出演作『Barracuda』に昇華する。25歳の時だった。
その後は俳優として順調にキャリアを重ねる。代表作は『ザ・ビーチ』、『ヴィドック』、『戦場のアリア』。現在公開中のクロード・ベリ新作『Ensemble, c'est tout』ではオドレィ・トトゥの相手役に。彼はいわゆるイケメン俳優ではないが、年を重ねるごとに格好良くなるお得な役者。そしてオドオド青年から凶暴野郎まで自由に表現できる計り知れなさがある。とにかく働き者で「いつも映画のことを考えている。バカンスは二日で退屈する」という。(瑞)







●Golden door
 二人の男が裸足で岩山を登り、山頂でマリア像に問う。「出発すべきか、否か」。答えはイエス。ならば目指そう新大陸アメリカ。20世紀初頭、シシリア島の農民一家は、希望と信仰以外の全てを捨てて、大型船に乗り込んだ。長く厳しい旅路の果てに流れ着くのは、NY港の入り口にある人民選別機関。憧れの新世界へのドアは、簡単には開かないものだった。
 イタリアのエマヌエーレ・クリアレーゼ監督は、歴史の波にのまれた移民の叫びを、タヴィアー二兄弟的土着性&叙情を糧に現代に届ける。それはマニュアル化して人を判断する輩が闊歩し続ける21世紀にも現在形で響き渡る。ベネチア映画祭銀獅子賞受賞作。(瑞)

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