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聞くほどに真相は藪の中。 |
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| 今回はパレ・ド・ジュスティスへ裁判を傍聴しに出かけてみた。軽犯罪裁判所内の警備員には、特に裁判内容や場所が掲示されているわけではないので、入れる部屋に自由に入ってみるようにすすめられる。 重い扉を押して中に入ると、被告席にはやせた中年女性のやつれた顔。罪状は薬の不正取引。被告よりもずっと若い女性弁護士は、早口で裁判官に訴える。「彼女を見て下さい。怯えて震えています。それに病気で…」。弁護が終わると弁護士は被告に握手を求め、被告は歪んだ笑顔でそれに応える。 休みなしに入れ替わりで、次の事件の被告が入廷する。今度はコンゴ人男女2人組の窃盗犯容疑者。今度の被告2人は堂々としている。裁判官が犯行当日の様子を訪ねても、「私たちは当日偶然会った」と説明し、滞在許可証がないことを指摘されても、「ダコール(OK)!」と言い放つ。場所の重さにアンバランスなあまりにも軽い返答だ。彼らはコンゴに強制送還になってしまうのだろうか。 この後も窃盗事件ばかりが続いたので、他の部屋に足を運ぶ。扉を開けると、すでに男女二人が最前列に座っている。横顔だけで美男美女のブルジョワカップルであるのがわかる。原告の女性はモロッコ人で仏人男性と結婚したが、暴力が原因で流産し離婚。心に傷を負い慰謝料を請求しているのだ。女性は終始白いハンカチを目に当てている。原告の弁護人は女性の不幸を語り始めた。その間も男性は落ち着いた様子で座っている。単なる傍観者の私も「なんて図々しい奴!」と、勝手に男に対して怒りが込み上げてくる。だが、男性側のヤリ手そうな中年のメガネ女性弁護士が語り出した途端、雲行きが一気に変わったのだった。「この女はコメディエンヌよ。今はしおらしくしてるけど最初の裁判の時は攻撃的だったでしょ。〈暴力〉というのも大げさ。それに最初に子供を堕ろしたいと言っていたのは、この女の方よ。10万ユーロくれだなんてどうかしているわ!」…。気がつくと、今度は被告の男性の方に、「変な女に捕まって、御愁傷様」と、同情の念がこみ上げてくる。我ながら勝手なものだ。 弁護の仕方一つで、一つのはずの真相がコロコロ塗り替えられてしまうことの恐ろしさ。もう見ている私も、何がなんだかわからない。弁護士らも、本当に何かを信じて弁護をしているのだろうか。美人モロッコ人の涙は、本物だったのだろうか。(瑞) |
パレ・ド・ジュスティスの 正面入り口。 ![]() ![]() |
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