時は1975年、所はベルヴィル。エミール・アジャール(ロマン・ギャリー)著の『La vie devant soi』の主人公モモに架空インタビューしてみた。モモは、3歳の時からユダヤ人のおばあさん、マダム・ロザに引きとられて育てられ、インタビュー当時14歳くらいだった。
「このへんにはアフリカ人も住んでいるけれど、多いのはアラブ人とユダヤ人だ。マダム・ロザもユダヤ人だけれど、アラブ人への差別はないよ。彼女の口癖は『辛い生活をおくっている時にはアラブ人とユダヤ人の違いなんか関係ない』だし、アラブ人のボクをとても可愛がってくれる。他にも何人か娼婦の子供を預かっているけれど国籍もさまざまだ。歳をとって足が弱り太っていて心臓も弱いのに、ボクらのアパートは7階だから、階段の昇り降りがきつそうだ。そして夜中に、アウシュヴィッツの収容所に入れられていた時代の悪夢にうなされて目を覚ましたりするのがとっても可哀想。強制収容所の時に少しも助けてくれなかったような神を、彼女は信じていない。でも、ボクのおとうさんといってもいいムッシュー・ハミルは熱心なイスラーム信者だよ。だから、いつもあの優しい微笑みがあるんだ。ムッシュー・ハミルからはイスラームのことをいろいろと教わっている。ボクにはモロッコ人かアルジェリア人の血が入っていると思うから、イスラームを信じることで、ボクなりの故国を持ちたいからね。いつかマッカにも行ってみたい」(インタビュー:真)
*写真はモシェ・ミズラヒ監督の『La vie devant soi』より。モモ役はサミー・ベン・ユーブ。