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—フレンチ風ニス塗りの技術—
天然のニスにこだわり続けている。
 キリや金づちが立てかけられた作業台、積み重なる紙ヤスリ、無造作に置かれた椅子や棚。本日はエベニスト(家具師)マルクさんのアトリエにお邪魔した。アンティーク家具の表面を艶やかに仕上げるvernis au tampon(フレンチポリッシュ)と呼ばれるニス塗りの技術について、説明をしてもらうためだ。

 まず道具の紹介から。見せてくれたのはウールを亜麻布で包んだスポンジ布と壺の中のニス。ニスはアルコールで溶かしたgomme laque(セラック)だという。「ゴムラック…?」。専門用語にピンとこない私を見かね、マルクさんは奥から実物を持ってきた。それは鉱物のようにキラキラ光る紅茶色の薄い断片。この謎の物体は、亜熱帯地方で生育するという昆虫カイガラムシが分泌した樹脂状物質だ。「最近はセルロースなどの化学物質を使う職人が多いが、環境にも良くないね。私はこの天然の物質セラックを使って、昔ながらの方法にこだわっている」とのこと。現在、パリで彼のように化学物質を使わないこだわり派のエベニストは、10人ほどしかいない。
 アンティーク戸棚の一部分がテーブルに置かれた。ニス塗りの前に、pierre ponceという白い磨き粉をまぶし、木の表面の気孔をふさぐのだ。丁寧にすり込まねばならず、「一番しんどい作業」となる。そして一週間ほど放置させた後、ようやくニス塗りとなる。今日はこのまま一週間は待てないので、マルクさんにニス塗りのフリをしてもらうことにした。前述のニスを含んだスポンジ布で、円を描くように何層にもわたって付着させる。回を重ねるうちに段々とアルコールの量を増やし、ニスの跡を徐々に目立たなくさせるのがコツ。「化学物質を使わないニスは、仕上がりの透明感が断然違う」のだとか。
 このニス塗りのテクニックは、フランスで開発された技術だ。歴史を古く18世紀のルイ16世治下までさかのぼれるという。一点一点、手間暇をかけないと仕上げることができないのは、昔も今も同じなのだ。「大変だが、アンティーク家具に再び命を吹き込める喜びがあるよ」。マルクさんに出会った家具たちは、幸せものに違いない。(瑞)



マルクさんのアトリエ:
14 rue Jules Valles 11e
01.4373.5346
隣には、マルクさんの妻、ベネディクト・ビュシェさんの作品を常時展示しているギャラリー。地下にはマルクさんがファンの即興ジャズのクラブ。

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