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『電車男』は、作品というより製品という感じが日本的。
 7月21日@新宿文化シネマ『電車男』を「お立ち見」で観る。今日から夏休みとはいえ、公開(6/4)1カ月半も経っているのに大変な人気だ。
 事の起こりは、インターネット上の匿名掲示板「2ちゃんねる」であった。アキバ系(秋葉原に通って、PC機器、アニメ、フィギュアなどを収集する)ヲタクの某君が電車の中で酔っぱらいに絡まれている美女を救った。やがてエルメスと呼ばれることになるその女性からお礼の品が贈られてきて舞い上がった男は、なにしろ彼女いない歴=実年齢、つまり女性と付き合ったことが一度もないので、ど、どう対処して良いか分からず(ヲタクは人と直接話せず友人もいないので)ネット上のチャット仲間に相談する。見ず知らず匿名の友人たちは彼を〈電車男〉と名付け、彼の恋が成熟して行く過程を叱咤激励し我が事のように一喜一憂しながら見守る。
 これは「2ちゃんねる」上で起きた実話と言われ、やがてこのチャット巨編は一冊の本にまとめられベストセラーとなり映画化され大ヒット。5冊の漫画誌で競作されTVドラマにもなって舞台公演も始まる。平成の日本人の心をキャッチした感動の純愛ドラマ、それが『電車男』だ。「大丈夫?」と思わず声をかけたくなるような冴えない青年が、勇気を振り絞って一人前の男になっていく姿、「人を好きになるって苦しい」という赤裸々な初恋の報告、「これ以上進む勇気がない」という彼を不特定多数の人たちが「頑張れ!」と応援する。孤独なみんなの魂が〈電車男〉を媒介に触れ合う。なんとも21世紀的な話ではないか!
 山田孝之・中谷美紀主演、村上正典監督。映画は充分に楽しめる出来だが、大きなマーケティングの渦の中で作品というより製品という感じが日本的。(吉)
●L'Avion
 雪が舞いちるクリスマス・イヴの日。少年シャルリは、父(ヴァンサン・ランドン)から大きな飛行機の模型を贈られる。だがすぐに、父は事故で還らぬ人となってしまう。
 脅迫観念に冒された心理を淡々と凝視する作風で知られるセドリック・カーン監督が、突然児童映画に新境地を見いだしたのは驚きに値する。飛行機の浮遊感覚に心ときめく、パパもママも安心の良心的なファンタジー。ただし死んだ父との再会シーンは、紋切り型に美化され、やや白々しい。同様の場面なら、ジャック・ドワイヨン監督の『ポネット』で描かれた、飾りのない真実の方に人は心打たれるのでは。真実に敏感な子供の感性を、甘く見てはいけない。(瑞)

●Voisins, voisines
 マリック・シバンヌの作品は、いつもやさしい。カソヴィッツなど若い監督たちが1995年前後にパリの北郊外を描く作品を続けて発表した時期に、シバンヌが世に送った『Douce France』でもすでにこのことを強く感じた。社会背景や人種が違う人々が一緒に生きていく様を描く暖かい視点がある。この新作では、パリ北郊外にある一つの建物の数カ月が、隣人同士の問題に直接巻き込まれる管理人と、傍観者という立場にいる住民=ラップ音楽のミュージシャンによって描かれていく。もちろんこれらのシーンは監督の「想像」の世界に過ぎないけれど、こうした触れ合いがあってこそ人って人生って面白いんだよなー、と感じる。(海)

Vincent Vindon
 疑い深そうな視線と率直な物言い。それでも意外なほど不快感を残さないのが、俳優ヴァンサン・ランドンの強みか。現在パリの映画館では、『L'avion』、『La Moustache』の二作品で、彼の姿を目にできる。
 1959年生まれ。父は出版社エディション・ド・ミニュイの創立者。映画の衣装係や日刊紙の記者を経験後、俳優を志す。23歳の時、通っていた演劇学校の教師の推薦で、映画の端役デビュー。88年には青春映画『スチューデント』でソフィー・マルソーの相手役に抜擢され、たちまち夢見る乙女たちから熱烈な支持を受ける。このころは、自らの出自にあらがい、映画『ガスパール 君と過ごした季節』(90)の青年ロバンソンのようなアウトサイダー的な役を好んだという。俳優としての成熟は、映画『女と男の危機』(92)から。以降、「現代ブルジョワ男の苦悩」が演技の十八番に。だがいかに社会的地位に身を包んだところで、滲み出る野性の匂いは消え去らない。そしてそれが彼の魅力にもなっている。代表作に、『Ma petite entreprise』(99)、『女はみんな生きている』(01)など。
 私生活では、モナコのカロリーヌ王女と交際し、スキャンダルにまみれた過去も今は昔。現在は、女優サンドリーヌ・キベルランとの間に、5歳になる愛娘シュザンヌちゃんがいる。(瑞)


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