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やったぜパパ、ホームラン!
 ジルさんが日本で暮らした12年間は変化に富んだ時期だった。東京外語大学を出てフランス系企業に就職。知砂子さんと結婚し、娘の雪ちゃんが生まれた。その彼が、去年フランスへ帰国した。パリ本社へ転勤となったのだ。
 昨年の12月にまずひとりで渡仏し、ホテルと会社を往復しながら家探しを始めた。彼の会社では、低家賃住宅を建設・管理する半官半民の機関へ分担金を納めているので、社員はその恩恵にあずかることができる。希望事項を添えて申し込むと、適当な物件の空きが出たところで事務局から会社へファックスが届き、その物件を見て気に入れば契約、という仕組みだ。すんなり行きそうで、そう簡単に見つかるものではない。今のアパートが見つかるまで丸2カ月かかり、約20の物件を見たそうだ。
 色々な物件があった。例えば20区の広くて安いバルコニー付きのアパート。以前その建物のバルコニーが縦に一列落ちるという事件があり、落下現場ではなかったものの、危険なのでバルコニーの使用は禁止という代物だった。もうひとつ、今でも心残りの物件がある。ある日めずらしく、パリの中心9区の物件情報が入った。翌日早速見に行くと、古くて趣のある建物で内装も完璧。即、電話ボックスへ駆け込み事務局へ連絡したが、前日ファックスが流れた30分後には借り手が決まっていたという。良い物件は競争率が高い。素早さが勝負だ。


 疲れ果て、雪ちゃんの声を聞こうと日本へ電話をすると「パパおうち見つかった?」「まだだよ」「バイバイ」という悲しい会話もあったという。しかし今年の2月ついに今のアパートを見つけ、やっと家族が勢揃いした。13区は国立ミッテラン図書館の近く、大きな居間に寝室が2つでバルコニー付き。収納場所も多く、日当り、見晴らしも抜群。そばに公園もある。78m2で家賃は5100F。壁の薄さと周囲が殺風景なこと以外は、いうことなし。全員大喜びで、パパ、逆転ホームラン! 契約決定の決め手は?「マドレーヌ近くの勤務先まで14番線メテオールで直行、たったの20分!」お父さんの本音だ。(仙)

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